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時計遺産としてのパイロットウオッチ

●著者プロフィール:篠田哲生(しのだ・てつお)

1975年生まれ。時計ライター。講談社『ホット ドッグ・プレス』を経て、フリーランスに。時計学校を修了した実践派で、時計専門誌からファッション誌、Webなど幅広い媒体で時計記事を執筆。高級時計からカジュアルウォッチまでを守備範囲とし、カジュアルウォッチの検索サイト『Gressive Off Style』のディレクションも担当。著書に『成功者はなぜウブロの時計に惹かれるのか。』(幻冬舎)がある。



 さまさまなテクノロジーが発展した1920年代。腕時計を大きく進化させたのは、時代をほぼ同じくして生まれた航空機だった。だからこそパイロットウオッチには特別な魅力が宿っている。

●世界が発展し、時計が進化する

 時計の進化の歴史は、他のテクノロジーの進化と無縁ではいられない。例えば、装飾品でしかなかった懐中時計が視認性や携帯性にこだわり始めたのは、産業革命以降に工場で生産管理を行う必要が増えたことが一因。厳しい精度を追求し始めたのは、鉄道の開通によって正確なダイヤ運営が必要になったから。

 簡易潜水器具であるアクアラングが完成し、スキューバダイビングができるようになるとダイバーズウオッチが生まれ、「統一されたルールの下、他者と競い合う」という考え方が定着した近代オリンピック以降は、試合の正確さを高めるためにタイムを計測するクロノグラフが生まれている。

 中でも航空機の進化が、時計に与えた影響は大きい。黎明期の航空機は、性能も低く航行距離も長くはなかった上に、墜落すれば命の保証はない危険極まりない乗り物だった。それでも多くの冒険家や発明家たちは大空を目指した。

 その際に時計は、燃料や速度の計算をする上で必須の機器だった。懐中時計が主流だったが、両腕で操縦桿を握ると胸ポケットから時計が取り出せないので、懐中時計を腕にくくりつけた。これがやがてパイロットウオッチへと繋がっていく。

 パイロットウオッチに求められる要素は、操縦中のパイロットをサポートする計器であるということ。視認性や操作性、装着感に優れており、何よりもタフでなければならない。それらの要素は腕時計に求められる普遍的な価値でもある。パイロットウオッチはいつしか、腕時計界のベンチマークとなっていく。

●ロンジンのデザインには理由がある

 ロンジンは航空機時代が始まった1920年代から、航空産業と深い関係にあった。航空計器を製作し、パイロットはロンジンの懐中時計を愛用。FAI(国際航空連盟)やAAA(米国航空協会)のオフィシャルウオッチとなり、世界中で行われる飛行記録の公式計時も担当している。ロンジンの発展は、航空機の発展とともにあったのだ。

 2013年の新作としてロンジンのヘリテージコレクションに加わった「ロンジン アビゲーション オーバーサイズ クラウン」は、1920年代に作られたロンジンの傑作を基にデザインされている。特徴はマーカーがついた回転ベゼル。これは経過時間や設定時間を知るために用いる、シンプルだけど実践的な機構だ。

 さらに大型のリューズもアクセントになっている。これはグローブ着用時でも、時計の操作性を向上させるため。そして操作時に誤ってベゼルに触れてしまわないように、巻き芯を長めに設計しているのも特徴だ。

 ちなみに「アビゲーション」というのは、アビエーション(航空学)とナビゲーション(航海術)を融合させた造語であり、ロンジンのパイロットウオッチに与えられる特別な名称。航空計器のひとつとして、極限状態でも使いこなせるようにという目的から生まれたモデルたちなので、ディテールまで嘘がない。

 だからこそロンジンのパイロットウオッチは魅力的なのだろう。必要がそのまま形になったデザインは、時代を超えても廃れることなく愛される。これこそが、時計文化の「遺産(ヘリテージ)」と呼ぶにふさわしい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131224-00000084-zdn_mkt-soci
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